平成23年度2学期初めの挨拶

平成23年8月29日(月)

本日から、3つの学年がそろって2学期が始まりました。久しぶりに登校して来た生徒たちの元気な笑顔を見ると、やはり、私たち教職員も顔がほころびます。

  掃除を終えて体育館に集まった時、3年生女子生徒が「校長先生、今日は何の話をするんですか?」と尋ねました。この一言は、とても嬉しく思いました。始業式、終業式等の校長の話に関心を持ってくれている生徒がいるということで、嬉しく思いました。

    では、校長の話の一部を紹介します。

 私が、この夏読んだ1冊の本を紹介します。

それは、池井戸 潤作『下町ロケット』です。今年の直木賞を受賞し、今、WOWOWでドラマが放映されている話題作です。

主人公の佃は、子どもの頃、アポロ計画に興奮し、図書館の図鑑で月面の写真を眺めて育ち、自分のエンジンでロケットを飛ばしたいという夢をもっていました。

 しかし、研究員となって、開発したロケットの打ち上げに失敗してしまいます。その後、亡き父の後を継いで町工場の社長になります。

その町工場がロケットの最先端技術を開発します。そのロケットの最先端特許をめぐって、大企業の圧力が次から次、様々に襲いかかります。この大企業に対して、町工場の社員たち、特に若い社員が佃社長を中心に力を合わせて乗り越えていく物語です。

 さすが、直木賞受賞するだけの作品で、読む者をぐいぐい引き込みます。やはり、社長の佃に感情移入して試練に立ち向かう姿にとても感動しました。電車の中で読んで思わず涙ぐんでしまうこともありました。ストーリーの面白さもさることながら、佃社長の生き方に勇気と元気が出てきました。

 中でも、心に残った2点があります。

1つは、佃が社員に向かって言うセリフです。

「おれはな、仕事っていうのは、二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は飯を食うためだ。必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。だけど、それだけじゃ窮屈だ。だから、仕事には夢がなきゃならないと思う。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない。お前だってうちの会社でこうしてやろうとか、そんな夢、あったはずだ。それはどこ行っちまったんだ。」

 もう1つは、大企業から執拗な評価検査を受けた際、それを待ち受ける社員が職場に掲げたポスターのキャッチフレーズです。

「佃品質。佃プライド。」です。

そして、社員のセリフ。「おれたちはプライドのために戦ってるんじゃねぇか。だから絶対に負けちゃいけねぇんだ。」

 ものづくりに携わる人たちの地道でひたむきな情熱が伝わってきます。こつこつした努力の積み重ねや、真面目に誠実に取り組むことの尊さ、夢を忘れないでいる純真さが胸を打ちます。

私は、この本を読んで元気が出てきました。皆さんも是非読んでください。

 読みながら、自ずと、自分の夢は何かと問う自分がいました。私の夢は、校長職にある今、「茨木西高校の教職員とともに、生徒の夢と志をはぐくむ」という夢です。

生徒一人ひとりが自信をつけ、志高く進路目標の実現をめざすよう活動を推進していく。 

我が生徒たちは、ス直で明るく優しい。そこに志高い目標を持たせ、それを実現するために努力させたいと思っています。

 その仕掛けの一つが「茨西プライド」の取組です。

地域と学校がスクラムを十字に組んで、生徒たちが活躍できる場を与えて、達成感をもたせたい、自信をもたせたいと考えています。

ボランティア活動に参加した生徒たちは、清掃活動で清々しい気持ちになったと言います。祭りや運動会で地域の人に喜ばれ、感謝されて、人の役に立つ、地域のために役に立っていることを喜んでいます。

そういう中で、生徒たちは積極性と高い志を持つようになります。成長し、目標にチャレンジしていくようになっています。

 ひとり一人が、「生かされている」「かけがいのない」大切な存在であり、将来、世のため人のために生きる使命を持っていることに気づいてもらいたいと思います。

「いかに生きるか」を考えてもらいたい。それが授業であり、行事であり、クラブ活動であり、社会貢献活動・ボランティア活動です。

  2学期スタートの集会では、この話の後、夏休みに多くの成果を出した部活動の表彰を行いました。

 女子硬式テニス部、水泳部、男子バレーボール部、陸上部、美術部の栄誉を称えました。

中でも、快挙は、美術部の2年生福盛由基君は第36回全国高等学校総合文化祭美術・工芸部門大阪府代表に内定したことです。同じく3年生叶野夢さんも第31回近畿高等学校総合文化祭美術・工芸部門の代表となりました。

 集会の最後に、今年インターンシップ生として本校で活動してくれる大学生の皆さんを紹介しました。

今年は関西大学から6名、立命館大学から3名、大阪大学から12名が参加してくれます。全員が一言挨拶をして、生徒たちは歓迎の大きな拍手で迎えました。

 夏休みに、大阪大学の学生たちが4階の1年生の教室のペンキ塗りをしてくれました。まず、掃除から始まり、目張りをして、ペンキを塗る作業でした。一生懸命取り組んでくれました。おかげさまで、教室が見違えました。学習環境がまた整いました。有り難いことです。

 今後は、文化祭のクラス活動の手伝いや本校のオープンスクールの準備をしてくれます。私たちも大いに助かりますが、生徒たちも大学生と身近に接し、高校卒業後に目を向けるきっかけになると思います。そして、大学生たちも、学校現場でいろいろな経験をして、青少年教育への思いを熱く、深くしてもらえたらと思います。